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ミニストーリー
マイタウン安城 (13)
趣味が開く人の輪
稲垣 優

 授業参観を終え、一人の父親、河崎さんと一緒に帰途につく。以前、田んぼに木切れを投げ込んでいた子のお父さんだ。私が聞く。

「河崎さんは、もともと安城のかたなんですか」

「いいえ。私も引っ越してきたんです。五年前にね」

 急に親近感が増した。

「安城へ来たとき、うまく安城人になれるかなあ、なんて考えませんでしたか」

「えっ?」

 河崎さんは、ちょっと考える目をして私を見た。

「あなたも五年前の私のように、近所付き合いや人との輪が気になっているんですね。分かるなあ、僕もそうだったから。でも僕の場合、バードウオッチングのおかげで、知り合いが増えたんですよ」

「バードウオッチング?」

 私が首をかしげた。

「ご存じないですか。鳥を見るだけなんですけど。私は鳥が好きで、よく森へ出かけたんです。安城へ来たばかりのころ、近くに大木があったので、そこでよく鳥を眺めていました。ある日、近所に住むバードウオッチングの会かたが私に声をかけてくれましてね。入会しないかって。それからは知り合いが増えていきました。とにかくバードウオッチングは楽しいですよ。あなたもどうですか」

 河崎さんの話はいつ終わるともなく続いていた。そのひとみは輝き、生き生きしていた。

 同じ趣味を持つ者同士は、意外に簡単に仲良くなれる。それに趣味を持つことはストレス解消にも良い。老後を楽しく過ごす要素にもなる。私は、河崎さんの熱弁を聞きながら、自分も何かを始めてみようかと考えだしていた。

copyright : Masaru Inagaki (『風車』41号掲載 1991.10.15執筆)

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