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グダグダ
最近洋画がつまらない
稲垣 優

 行きつけのレンタル・ビデオ屋が、夏休みってことで、新手のサービスを始めた。ウイークデーに限り、日替わりでレンタル料が半額になる。月曜日はアニメ、火曜日はCD、水曜日は洋画、木曜日は邦画、金曜日はアダルトが、新作・旧作を問わず、なんと半額。これはうれしい。ということで、ついついレンタル屋をのぞく機会が増えてしまった。

 忙しさにかまけて、なかなか映画館へ行けないので、ついレンタルビデオでお茶を濁している。映画館の迫力を家庭用のテレビで味わえないことは百も承知。でも行けないのなら、せめてビデオでってことで、結構、借りている。

 アニメから洋画、邦画と、節操なくなんでも見るんだけど、最近、洋画がつまらなくなってきた気がする。うちの夫婦は、昔からホラー系が好きで、夜中にキャーキャー言いながら見てきた。結婚前に、初めて二人で一緒に見た映画は、忘れもしない「13日の金曜日」だった。何作目かは忘れたけど、名古屋の大きなスクリーンに繰り広げられる殺戮に目を見張ったものだ。

 その後も(映画かビデオか忘れたけど)「遊星からの物体X(惑星からの、だったっけ?)」とか、一連の「エイリアン」、「キャンディーマン」「光る眼」「シャイニング」「IT」(ほかにもスティーブン・キング原作ものはいくつか見た)「ポスターガイスト」「ボディースナッチャー」「エンジェルハート」など、怖い系だけでもいろいろ見た。面白かったものは、中身もよく覚えている。だけど最近はどうもいけない。

 「スピーシーズ」というものを、少し前に見た。ストーリーもよく覚えていないんだけど、とにかく人間に似た生命体が人間を襲うって話。これとは少し違うが、最近では「レリック」とか「ミミック」なんかも見た。遺伝子分析とか、そういうアカデミックな内容が出てくるものの、なぜか新しさを感じない。よくよく考えてみると、初代「エイリアン」の路線だ。姿を隠して人間を襲う怪物。逃げながらも、最後には怪物をやっつける人間。ほんとにワンパターンなのだ。コンピュータによる映像操作が巧みになっているので、映像そのものには違和感がない。いかにも作り物という感じはしない。でも話が面白くないのだ。

 「エイリアン」の面白さは、隊員にくっついた妙な生物が何であるかを知ろうとすること、そいつが瞬時に進化して一人ずつ人間を殺す恐怖、登場人物の恐怖に対する反応の違い、そして実は怪物を持ち帰るように仕組まれていたという内容などが、巧みに組み合わされている点が面白かった。ギーガーが作ったエイリアンは確かにおどろおどろしかったが、それだけで映画が面白くなるはずもない。ところが最近の映画(私が見たもの)は、どうも人間の感情の機微とか、練られた話の展開といったものがなく、ただコンピュータ・テクノロジーを駆使した映像っていう方向に走っている気がする。

 「TOY STORY」は、世界初のフルデジタル映画だけど、それを感じさせないところがすごかった。ストーリーに集中させてくれたんだから。やっぱり映画は、面白くて、感動できるものであってほしい。シリコングラフィック社のマシンパワーを見せつけるだけの映画はいらない。

 面白さを感じられない映画をいくつも見た後に、友人から「もののけ姫」のレーザーディスクを借りた。今回は期待が大きかったためか、ちょっと肩すかしを食った気もするが、それでも宮崎氏の力はスゴイ。個人的には「風の谷のナウシカ」の方が、分かりやすい分、親しみがもてるのだが、「もののけ姫」もバックボーンは相変わらずで、それが私にはうれしかった。

 細かいことを言えば、タイトルネームである「もののけ姫」の存在感が薄かった気はする。森(自然)に対する思いは、映像にシコタマ詰め込まれているものの、言葉や話の流れの中では、若干薄れてしまい、そのへんのギャップが、われわれ凡人にはうまく消化できない気もしないではない。しかしそれを超える「何か」があるため、2時間を超える長い時間でも、全く飽きることがなかった。

 最近、日本映画が復活してきたと言われている。北野武氏の「HANA-BI」がベネチアで大賞をとったからというのではなく、日本映画自体に面白さを感じるようになった気がする。故伊丹十三氏の一連の作品は、その先兵であるのだろうし。

 まあ、私は映画評論などできるほど映画を見ているわけではないので、あんまり偉そうなことを言ってはいけないが、それでも(くどいけど)最近、洋画が面白くない。「もののけ姫」のレーザーディスクを貸してくれた友人は「スピード2」も面白くなかったと言っていた。私は「スピード」しか見ていないが、あれとて、迫力はスゴイし、金のかけかたもスゴイ。だから見ているときは「すげーな~」と思うものの、見終わっても何も残らない。「ミッション・インポッシブル」もそうだった。もう一度見たいという気にならない。でも「もののけ」は見終わった後でも、もう一度見たいと思った。

 「タイタニック」が大評判だが、あれは別かもしれない。私はまだ見てないので、なんとも言えないが。あるいは、私がつまらない洋画ばかり選んでいるのかもしれない。それでも、ちょっと前の作品「DNA」はそれなりに面白かった。マーロン・ブランドが出ているからと言われればそれまでだが、実は私は、見終わるまでそのことを知らなかった。で、「DNA II」も見たが、こっちは全然面白くなかった。そういえば「ジュラシックパーク」はそこそこに面白かったが、こいつの続編である「ロストワールド」は面白くなかった。前作からの期待があるからかもしれないが、これとて「ジュラシックパーク」では、人間の恐竜への思いとか、生物学者の思いとか、そういう人間の機微を表していたのに「ロストワールド」では、単に恐竜が人間を襲うだけのものになっている気がする。なんだかな~。

 てなことで、言いたいことを言っちゃった。映画を作っている人たちは、それこそ超大変なんだろう。お金はかかるし、時間もかかる。ヒットしなかったらどうしようという心配もある。それを考えると、自分も、ものを作る仕事をしているためか、つい同情的な気分になる。でも芸術でありエンターテイメントである映画は、やっぱり面白くなくてはいけない。それが第一次的な必要事項だと思う。

 アメリカ版「ゴジラ」は、映像的にはスゴイらしい。まだ見てないけど。見た人が『ミステリマガジン』にコラムを書いていた(筆者の名前は忘れた)。その人によれば「日本のゴジラは神だった。でもアメリカのゴジラは、ただの怪物だ」。「もののけ姫」を見ると、このアタリのことが本当によく分かる。八百万の神の国である日本では、神は怪物にもなるし、怪物はただの邪魔者ではない。鎮めるべき対象であり、人間と共存するものでもある。そのあたりの思いが含まれないことが、最近の洋画をつまらなくしているのだろうか。ま、日本人の勝手な思いだと言われればそれまでだが。

 というわけで、まだ見てない人。やっぱり「もののけ」は見ておいて損はないよ。

 それから、これは情報なんだけど、次回のジブリ(宮崎氏の作品などを出してるところ)作品は、なんと「となりの山田くん」なんだって。テレビでもやってた「おじゃまんが山田くん」ってやつ。あれなの。監督は「思ひでぽろぽろ」や「平成狸合戦ぽんぽこ」の高畑氏。そんでもってこの「山田くん」、ジブリ初挑戦のフルデジタルなんだって。セル画が一枚もないって話。詳しくは日本テレビホームページ(http://www.ntv.co.jp/)のジブリのコーナーを見てね。

copyright : Masaru Inagaki(1998.8.3)

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