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オロナミンC的広告
ブログ掲載

(※このコラムはブログ「てなことで……」に掲載したものです)

 どうでもいいことだが、このところ、立て続けに妙な広告を目にしている。もしかしたら「今ごろ」と言われるかもしれないが、気になっているので書いてしまう。


 「立て続けに」とは言うものの、二つ見ただけで、考えてみれば大したことではないのだが、妙に気になっている。

 ことの始まりは、電車の中吊り広告だった。

 27日の日曜日、豊橋へ行く用事があったのでJRに乗った。一人で乗ったので手持ち無沙汰になり、車内上部にある中吊り広告へ目がいった。

 そこには、競艇場の広告があった。初めは競艇広告とは分からなかった。左に縦組の大きな文字で「挑戦云々」と書いてある(詳細は失念)。その右には、上部に人物があり、下部には赤い楕円の中に「ミナミリンC」とか書いてある。「ミナミリン」の部分は記憶が曖昧だが、たぶんそんなような言葉があったように思う。「ミナ」は「皆」の意だろう。「ミリン」は、たぶん、このあたりの方言の「見りん(見てみなさいよ)」だと思う。さらには「C」の文字が、ボートの軌跡になっており、文字の端に小さなボートが配されていた。

 これを見て私は、妙な違和感を覚えた。「この広告、見たことがある」と思ったのだ。正しくは「これに似た広告を見たことがある」のだ。

 よくよく見ると、これは往年の「オロナインC(大塚製薬)の広告デザイン」に酷似している。左側に縦文字で大きなコピーがあり、右上部に人物、その下に赤い楕円。楕円の中には商品名があるというあの広告だ。

 私の年代には、めちゃくちゃ懐かしい広告であるが、今はとんと見ない。とはいえオロナミンCは、相変わらず販売が続けられており、新しいテレビCMをよく見る。しかし私の中のオロナミンCの広告は、上記のデザインなのである。

 ご存じない方のために、当時の看板をご紹介しよう。以下のURLは個人のサイトだが、古い看板がたくさん掲載されている。そのうち「オロナミンCの歴史」と題されたページである。

 この看板画像を見ていただくと、前述のデザイン(レイアウト)がお分かりいただけると思う。なおこの看板は、ホーロー仕立てで、昔は薬屋やらタバコ屋やらによく飾られていた。今でも山間部の店舗などでたまに見ることがあるが、それくらい広く掲示されたものだったようだ。

 Wikipediaの「オロナミンCドリンク」ページには、この看板が昭和40年代に全国展開されたことが記されているが、確かに以前はどこででも見ることができた。旅行先などでも、当たり前のように掲示されていたものだ。


 さて、電車内の中吊り広告に違和感を持った私も、それがオロナミンCの広告デザインとよく似ていることが分かると「ああ、なるほどね」と納得した。しかし次に別の疑問が持ち上がった。

「なんで今ごろ、古いあの広告デザインが使われているんだ?」と。

 このデザインは、洗練された雰囲気はないものの、広告として最も重要な「インパクト」を持っている。また当時はそこら中に掲示されており、テレビCMまで展開されていたから、ある種の刷り込みからか、一瞥しただけで製品名が頭に浮かんだものだ。さらには「元気ハツラツ」というキャッチコピーまで出てきてしまうのだから大したものだ。私の脳内の展開が「大したもの」ではなく、一個人にそこまで発想させることを可能にした広告展開が「大したもの」なのである。

 とまあ、ここまでなら「なんでまた古い広告デザインを……。まあノスタルジックということかなあ。若いデザイナーにとっては新鮮なデザインだから採用したのかもしれないな」くらいにしか思わなかった。

 ところが今日、小学館コミック『ビッグコミック・スピリッツ』のサイトをたまたま(「20世紀少年」の実写版の監督が堤氏に決まったと知ったので)見て驚いた。

b_comic20070528.jpg 今週のスピリッツの表紙が、あのオロナミンC状態なのだ。

 まただ、またオロナミンCだ。一体どうなっているんだ。

 スピリッツの方は、本家のオロナミンC広告の完全なパロディとなっている。ホーロー看板風であり、軒先(たぶん古い店の軒)にぶら下げられている。写真が小さいためよく分からないが、もしかしたら看板部分だけを撮影し、中身を替えたのかもしれない。あるいは看板背後の風景まで、合成やらCGやらで作ったのかもしれない。いずれにせよ、手の込んだ画像である。

 この表紙は『20世紀少年』の続編である『21世紀少年』を紹介する形になっている。人物に主人公のケンヂを使っているし、左下にはウルトラマンのお面をかぶった子もいる(昔なら星飛雄馬や鮎原こづえがいた)。


 ということで、私はなんだか妙な気分になっている。

 どうして今、オロナミンC広告なんだろうか。私が見たのは二つだけだが、地域の競艇広告にも、全国誌にも採用されているということは、今の「はやり」なんだろうか。広告業界からちょっとだけ遠い位置にいるので業界内の動向が見えないが、もしそうならこれも「新しい流れ」なんだろうか。

 なんとなく落ち着かない自分がいることに気づき、どうして落ち着かないのか知りたいと思いつつ、結局よく分からないため、いつものように「ま、いいか~」で終わるのであった。

copyright : Masaru Inagaki(20070530)

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