マックの基本は、なんといっても「一体型」だ。私はずっとそう思って来たし、今でもそう思っている。
初めて買ったマックはIIciだった。でも本当はSE/30に興味があった。当時、DTPをやるためにマックを買ったので、モニタの大きさ、CPUの能力などを考え、当時ナンバー2(1番はあのIIfxだ)だったIIciを買った。もちろんそれは正解だった。レイアウトをするときのリドロー・スピードも、そこそこに感じたし、新たにビデオカードを買わなくても、15インチ縦型のポートレートモニタが使えたのもよかった。
それから何年かたって、LC IIIやPowerMac8100を買った後、中古のSE/30を手に入れた。安かった。3万円だった。メモリ8MB、ハードディスク200MBと、SE/30が新品で買えたころなら夢のような状況が、3万円で手に入った。うれしかった。今でもときどき使う。そばに置いておくだけでうれしい。
やっぱりマックは一体型だよなと、改めて感じるのだ。
PowerBookも買った。550cだ。もう4年以上前になる。こいつは日本限定の機種で、CPUは68040。Quadra800と同じ石を積んでいる。当時人気だった540cは680LC40搭載。つまりコプロがない。550cはコプロがあるから、一部のソフトでは重宝した。それにスピードも満足するものだった。
PowerBookのユーザーになってみて、さらに「マックは一体型だ指向」が強まった。ちょっとキーボードは打ちにくいが、それでもオールインワンで、持ち運べるのはうれしい。ちょくちょく仕事で持ち歩くようになった。
しかし当然のようにPowerBookは進化した。5300シリーズが出て(これはちょっと問題があったけど)その後1400シリーズが出た。そうこうしているうちに3400が出て、日本ではベストシリーズとなった2400も出た。すべてPowerPC搭載だ。こうなるともう、68040なんてCPUは、遠くの方にかすんでしまった。もはやPowerPCでないと話にならない……というふうだ。
それでも私は「いいんだ。550cは使いやすいし、デザインもいいし。だからこれでいいんだ。PowerBookでDTPなんかやる気ないしね」なんて、うそぶいていたのだ。確かにPowerPC搭載PowerBookの処理能力は魅力だった。でも物足りなかったのだ。「しょせんPowerBookはノートパソコン。デスクトップマシンの代替として使えるものではない」という思いがあった。だから、外出時に便利だというだけで、それ以上のことを望まなかった。文字入力ができて、メールのやりとりができて、とっさの場合にQuarkXpressや、Illustratorや、Photoshopが動けばいいと思っていた。それにしたって、満足に動く必要はないし「とにかく使える」レベルでよかったのだ。
またプレゼンに使うとき、家庭用のテレビに映像が出せるとうれしかったが、その点は、Appleのプレゼンテーションシステムを買うことで実現した。だから問題はなかった。ただ、外部映像が256色しか出ないことは不満だった。同時に内蔵の液晶でも、640×480ピクセルでは256色表示が限界というのも、ちょっと不服だった(640×400にすれば16ビットになるが、これでは上下が欠けてしまう)。
私の中では「PowerBookは持ち運びが命。だからデスクトップ並の能力を求めては酷だ」という思いが根強く残っていた。半面、一体型がマックの基本と思う気持ちから「PowerBookがデスクトップ並になれば、どんなにいいだろう」とも思ったが、そんなことはあり得ないと考えていた。だからColor Classicのタイプで、もっとハイ・スペックなものが出ればいいと思っていた。大きな一体型は、あまり好みではない。やっぱりSE/30のサイズが理想だ。だからカラクラをベースに考えた。DTPをするなら、外部に17インチか20インチのモニタをつなげればいい、それが実現できて、なおかつハイエンドのCPUを持つ一体型を、心のどこかで待ち望んでいた気がする。
しかしそれは出なかった。確かにiMacは出た。ハイスペックで一体型。デザインもいい。これはこれで、非常に「買い」だと思った。今でもほしいと思っている。でも私の望んでいた一体型とは、ちょっと違う気がした。仕事でも使うことが前提となるため、どうせなら持ち運びができた方がいい。プレゼンにも便利な方がいい。DTPだけというのならG3-300MHzあたりが素敵だが、これでは持ち運べない。
そして、PowerBook G3が出たのだ。
知り合いが、こいつ(PowerBook G3)を買った。266MHzのヤツだ。触らせてもらった。そして私は「これだ!」と心の中で叫んだ。
PowerBook G3は、化け物だ。CPU能力はもちろんのこと、外部接続用の端子も、とにかくすべての面において充実している。いや卓越しているといってもいいだろう。これ一台あれば、なんでもできてしまう。もちろんDTPもできる。ただ、液晶の限界があるため、フォトレタッチのように画像の色にかかわるものでは、少々問題が出るが、それ以外は、問題を見つけることができない。画面は14インチのTFT。表示はCRTの17インチ相当だ。まあ、3kgオーバーという重さは、問題と言えば問題だが、モバイルマシンではなく、オールインワンで持ち運びもできる高速マシンと考えれば、この重さは「軽い」とさえ思える。とにかくすごい。これは買いだ。仕事から趣味から、すべてに対応できるマシンと言ってもいい。
今、私は、こいつが欲しくてたまらない。だけど(いつものことだが)お金がない。ソフトウエアのバージョンアップも、まともにできないくらい、お金がない。そのうえコイツは、めっぽう高い。PowerBook G3(266MHz)で50万円はかかる。300MHzでは軽く70万円だ。こりゃ手が出んわ。でも欲しいなあ。
私がコイツを欲しがるのは、とどのつまり、一体型の理想形だからかもしれない。私が一体型にこだわる理由を考えてみると、コンパクトという言葉に行き当たる。うちにはLC575という一体型もいるが、これはちょっと大きい。13インチモニタを組み込んだため、ある程度の大きさになるのは仕方のないことだが、私の持つイメージの一体型としては、大きいのだ。どうしてもSE/30のサイズがベースになってしまう。その点、大きくなったとはいえ、PowerBookはコンパクトだ。その上、持ち運びができる。それだけではない。PowerBook G3なら、今、私がメイン機として使っているG3MT266と同等のスペックを持つ。いや、それ以上かもしれない。これはやっぱりうれしい。あとは液晶の問題だけで、それは外部モニタで解消できるものの、すっごく贅沢を言えば、液晶がCRTを越えてくれるとうれしい。
ある情報によれば、医療用のモニタとして、新しい液晶(のようなもの、プラズマではない)が開発されているという。某展示会に参考出展されていたと聞いた。これは、人の小皺から毛穴までリアルに映し出すという。液晶というより、まるで写真も見るようで、気味が悪いくらいだとか。もしこれがPowerBookに搭載されれば、私の不満はなくなる。ああ、そんな日が来たら、そのときこそ二台目のPowerBookを買おう……。
本当は、今のPowerBook G3でいいから、ほしいんだけどね……。
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