Reading Page

 
イチオシ
焼き物のDAYANは悪気を払うか!?
稲垣 優

 片方が顔面の5分の2以上ある目。異様にデカい耳。あるのかないのか分からない口。その体からは想像もつかない大きな足。新たに放送が再開されるというポケモンのキャラクターではない。こいつはDAYANという。ダヤンと読むのか、ディアンと読むのか、はたまたデイアンと読むのか、実のところ、私も知らない。しかしそいつは、いつも私の目の前にいる。そうモニタの上に乗っかっているのだ。

 うちにいるDAYANは、体長約15センチ。DAYAN好きに言わせると「これ、大きいですね」とのこと。私はこれしか持ってないので、大きいのか小さいのか、全く分からない。でも確かにモニタの上に乗せるにはちょっと大きいかもしれない。とはいえ、まだ一度も落ちたことないもんね。

 なんでコイツがモニタの上に乗ってるかというと、風水と大きな関係がある。風水は「かぜみず」と読んではいけない。「ふうすい」と読みましょう。知ってる人は知ってると思うけど、中国系の世界では有名な、まあ、占いのようなもの。でも単なる占いではなくて、言ってみれば地理学というか、環境学というか……。作家の荒俣宏氏は、風水にかなり傾倒されているらしく、一時「ワタシノイエ」をはじめとする風水ものをいくつか書いていらっしゃった。今でも書かれているのかどうかは知らないが、あの博学の作家を夢中にさせるほど、風水は奥が深い。

 とはいえ、結局は占いであって「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と似た部分が多い。だからそれに人生をかけてしまうのは、ちょっとまずいだろうけど、捉え方によっては、結構当たるから面白い。

 まあ、風水の本によれば、占いってのは、そこに出てきた言葉をどう読みとるかによって、当たったり当たらなかったりするという。「池に岩が浸かっている絵が見えます」と言われたら、それを「岩が沈む」と見て自分がダメになる暗示と考えるか、「水の中でも平気な頑丈な岩」と見るかで、大きく意味が異なる。前者を頭に浮かべた者は「自分はもうダメだ」と思うだろうし、後者の場合は「このまま頑張れば大丈夫だ」と思うはず。つまり、その人の考え方や、そのときの状況などによって、同じ言葉でも捉え方が変わるから、占いが当たる可能性が高くなるというわけだ。

 占いってのは、人の未来を予言するものではなく、その人の精神状態を客観的な言葉(水の中の岩とか)によって表現するものであり、占いの内容を本人が聞いてどう思うかが一番大切なのだという。なるほど、これこそ言い得て妙というヤツだ。

 話を風水に戻そう。風水は日本では、家相と混同されることが多い。方角を基本にしているからだ。「裏鬼門(建物の南西部分)を出っ張らせると、その家の妻はカカア天下になる」なんてのも、確か家相の一つだと思う。で、家相の怖いのは、もし悪いことに当てはまってしまったら、家を改築するか建て直すしかないってこと。これは怖い。だって一度建てた家を、そうやすやすと建て替えられるわけがない。改築だって(20年もたっているならまだしも)そうそうできるものではない。

 で、風水の偉いところは、そういう問題があると、それに対応する策が用意されていることなんだ。たとえば、トイレやおふろや台所などの水場は、とにかくキレイにしなさい。方角でよく云々される鬼門も恐れるのではなくキレイにしておきなさい。また、玄関に観葉植物などの緑を置きましょう。入り口の左右両方に緑豊かな木を……。こんなふうにいろんな対応策によって、悪い卦(とは言わんかな?)を払う努力をする。

 私はこういう「前向き」な考え方が好きで、一時期ちょっとだけ風水に凝ったことがあった。マックのソフトで、お手軽に風水占いができるってのもあって、それで占ってみたりもした。自分の家の方角や部屋の位置。自分の仕事部屋の位置や机などのレイアウト。はたまた他人との相性まで占ったりして……。

 で、結果的には、良くもあり悪くもありだった。でも仕事場の位置は風水では最悪で、これではいかんということになった。レイアウトも悪い。日ごろ使う机は、ここでは南向きのほうがいいようだが、私はいつも東を向いて仕事をしている。これも(この部屋では)いかん。元来、東という方角は、日が昇る方向だから悪くはない。ヒマワリは生長すると、ずっと東に花を向け続けるけど、それはそれなりに意味があるのだろう(ヒマワリの花が太陽を追って回るのは、花がちゃんと咲く前だけなんだよ)。

 で、机の位置がわるいのなら、レイアウトを替えればいい。簡単なことだ。南向きにすればいい。でも……。私の仕事場へ来たことがある人は知っていると思うけど、ここはもう、レイアウト替えができるような空間ではない。机を一つ動かしたら、あとはどうなるか分からないし、考えただけでも恐ろしい。3日は仕事ができなくなるだろう。だから、たやすく机を動かせない。そこで、風水の「対応策」に頼ることにした。

 私の生まれ月から見ると、私は土と相性がいいらしい。だから焼き物類を身の回りに置くのがいいとされた。でも伊万里だの有田だのは高くて手が出ないし、瀬戸物でも何を置いたらいいのか分からない。カミさんは「タヌキの置物がいいよ」と大笑いで言うし、私も一瞬その気になったが、やっぱりあの「八畳敷」が、いつも目の前にあるのはいただけない。あれだけのブツは、やっぱり異様だ。

 てことで、そのままになっていた。もともと本気で風水を(全面的に)信じているわけではないし、ただ「そう言われると気になるじゃんね」の世界なわけで「ま、いいか」と、いつものいい加減さで時を過ごしていた。

 そんなある日、豊田の《そごう》へ行った。そこで焼き物のDAYANを見つけたというわけだ。これならタヌキの置物よりずっといい。だってちゃんとズボンをはいているからね。ちょっと目つきが生意気だけど、それもまあ愛嬌(あいきょう)があるといえばある。で、買うことにした。その日から、モニタの上に、DAYANが鎮座した。

 それからどうなったかって? あんまり変わらないね。相変わらずバタバタした毎日だし、徹夜も週に一度くらいはあるし……。でも気のせいか、体調が少し安定してきたようではある。ま、間違いなく「気のせい」だとは思うが、前述のように、要は自分が事象をどう捉えるかで、自分の気持ちも変わってくるし、自分のやる気も変わってくる。となれば体調だって変わってくるはず。だから結果的には、DAYANに来てもらって良かったと思っている。あとは、体脂肪を減らす方法を考えたいと思うが。

 そんなわけで、今回の「イチオシ」は、焼き物のDAYAN。私の気分を和らげてくれるこいつが今、仕事部屋の「イチオシ」ってことで……。DAYAN通の方がいらっしゃったら、DAYANについて教えて下さいませ。その後カミさんが、DAYANのシステム手帳を買ったんだけど、こういうのが出回ってるってことは、DAYANって結構人気があるのかな? 実は私、全然知らないのです……。

dayan.jpg

 てなわけで、本邦初公開のDAYAN。モニタの上に本当に乗ってるでしょ。隣の黄色くて小さいのは、きょろちゃんスタンプと私の結婚指輪(笑)。

copyright : Masaru Inagaki(1998.4.15)

読みもののページ

ショートストーリーを中心に、しょーもないコラム、Mac系コンピューター関連の思いつきつぶやきなど、さまざまな「読み物」を掲載しています。
20世紀に書いたものもあり、かなり古い内容も含まれますが、以前のまま掲載しています。